天候は全日程を通じて弱い冬型と予想された。雪不足を懸念していたが、入山直前に降雪があり、スキーツアーには支障がない程度に積もった。5、6年前に今回と同じルートの山行を計画したが、悪天のため三ツ石山荘から松川温泉にエスケープした。そんな経験があるにもかかわらず、またここへ来ようと思ったのは、さらにその2年前に、八幡平から秋田駒へツアーしたときの好印象があったからである。
12月30日 薄曇⇒風雪
網張スキー場にも今シーズン初めて本格的な降雪があり、圧雪車がさかんにゲレンデを整備している。そのゲレンデを滑るスキーヤーの動きには、ようやくスキーシーズンに突入した喜びがあふれているように見える。
リフトの終点の犬倉山近くから、1986年冬の記憶をたどり、双子峠のスキーツアールートへ向かう。(11:00)古ぼけた道標に導かれてそのルートに入ると、いきなり股までのラッセルとなる。これから後生掛温泉までの長い道のりを思い、気が遠くなってしまう。こまめにラッセルを交代しながら双子峠まで行き、小休止する。
大松倉山は大した登りではないが、稜線から右下に離れて三ツ石山荘へ下るところがポイントである。強い北西風にまともに向かっていく歩きは厳しい。なんとかプレートを見つけて細い切り開きを下っていくと木のかげになり風が弱まる。先のほうに三ツ石山荘も見えホッとする。しかしラッセルは続く。
三ツ石山荘には中年4人連れの元気のないパーティーがいた。(14:00)そのひとりがそのストーブに取り付いて、懸命に燃やそうとしていたが、この山荘が湿地帯の中にあるためか、ストーブは良く燃えない。そのあきらめた様子からすると、昨日からの降雪に閉口して、どうやら下山の算段をしているようだ。天気予報では、明日以降も好天は望めない様子だ。こちらは毛頭下るつもりはない。
12月31日 風雪
今年もいろいろなことがあった。2月に海外研修に行くことのOKが出た。それからTOEFLとGREの勉強をして何度も試験を受けた。秋からは大学院の出願準備が加わりさらに忙しくなった。その1年も今日で終わる。
天候は良くないが、大荒れにはなりそうもないので出発する。(6:50)三ツ石山へはラッセルである。1986年に来た時は、この斜面を少々登った後、天候悪化を懸念して松川温泉へ下山してしまった。今回はこれから天候は大崩れはしないようだが、風が強く、視界が100mぐらいしかない。大斜面を左上し、西風をまともに受けながら稜線を行くと、山名の由来となった大岩に出た。氷漬けの岩を左から巻くと、三ツ沼へと続く夏道が白く浮き上がって見える。それを見て、これからしばらくラッセルをしなくていいな、と思わずにっこりしてしまう。
沼地を過ぎるとほんのひと登りで小畚山だ。(9:30)ここでも道は鋭角に北上するが、その先にはトレースが見えている。これはいい。平坦な地形のところでホワイトアウトしていないとホッとする。川上は昨夏ここにピロリンと来たというので、二重に安心である。立ったまま休んでいると、手先の感覚が無くなってきたので、その手をズボンの中に入れたまま滑る。ところどころ風当たりが強く、歩行が不自由になる。手袋などを飛ばさないように注意がいる。
大深岳への登りは、樹林帯から平坦な裸地へと変わる。東側は松川の支流の湯ノ沢に切れ落ちているが、地形が明瞭なので、転落しないように注意しながら右寄りを歩く。ヒョッコリと道標が現れて、大深岳に着いたことを知る。なつかしい。川上の高度計を頼りに、大深山荘の標高まで下ったが、見当たらない。荷物をおいて、そのあたりを探すと、アオモリトドマツを背負った傾斜地に、見覚えのある山小屋があった。(12:40)
ここのストーブは良く燃える。階下には薪がたくさん置いてある。年の暮れと、大深山荘への再訪と、互いの健康と、その他もろもろを、豚の味噌焼きと酒で祝う。
1月1日 曇
明け方、茶臼岳の肩に初日の出が淡い紅をのぞかせたが、間もなくどんよりとした雲に呑み込まれてしまった。視界、1点の光明。
さあ、今日もラッセルのスタートである。(7:30)嶮岨森までは視界も比較的良かった。一昨日来の強風は弱まり、ただ吹きだまりに新雪が飛ばされている。ラッセルにも慣れて、苦痛ではなくなってきた。
諸桧岳への登りは、とても長いような記憶があったが、実際には呆気ないほど短かった。頂上からは木間越しに茶臼岳が見える。(11:10)頭上の雲が切れ始め、青空がのぞくようにさえなってきた。しかしそれは束の間のことだった。
畚岳に登り返す頃から、また降雪がはじまり、スカイラインの上のラッセルにはうんざりした。見返峠近くのドライブインや駐車場が新しく、大きくなっていた。ここからひと登りで八幡平の南端に出る。ここから陵雲荘まではすぐなのだが、ガマ沼に出てしまったので、小屋に着くまでもう一汗アルバイトすることになった。(14:00)
小屋に入り、早速ストーブを点けようとしたが、煙突に氷雪が詰まっていて、使えなくなっていた。それで、川上が梯子を掘り出して煙突のところまで登り、氷雪を掻い出して使えるようにした。後生掛温泉から登って来たパーティーと同泊になったが、その連中がやかましいうえに、酒と食料をふんだんに持っているので腹が立つ。しかし、明日はおれたちは後生掛温泉だと思うと嬉しい。
1月2日 曇
視界はないが空が明るい。(7:10)八幡平の頂上に立つと、冬のブロッケンが見えた。さらに、連なるモンスターのむこうに安比岳が見えた。ここから後生掛温泉までは、スキーで滑っていきたい気分だが、実際には新雪をラッセルしながら下ることになった。部分的に滑れるところもあるが、ブッシュが邪魔だ。高度が下がってくると、焼山方面が良く見える。山を取りまくブナ林が美しい。蒸の湯の湯気をくぐり、トレースに導かれて林道を下ると、後生掛温泉に出た。(10:00)家族連れのスキーヤーがいたりして、麓はすっかり正月の雰囲気だった。