1992年8月21日金曜日

ビーコン・ロック 1992年8月21日

 ポートランド州立大学の夏季講習がようやく終わった先週末は、ボブに誘われてマウント・フットの麓にハイキングへ行った。と思うと翌週にはジョンから電話があって、岩登りへ行こうという。唐突な誘いに感じられたが、6月にマウント・アダムスへ行った際に、そんな話をしたかもしれない。ともかくわたしはあれからずっと大学院の勉強が大変で、山へ行く余裕は全くなかった。今やっと夏休みに入ったので、今度は毎週のように山に出かけることになった。

朝6時にジョンがアパートに迎えに来た。ビーコン・ロックは、ポートランドから東に56㎞行ったコロンビア川沿いにある柱状節理の岩塔である。ここはオレゴンで一番いい岩場と言われているが、実はワシントン州内にある。世界的にはオレゴン州のスミス・ロック(スミスロックについては#331参照)が難易度の高いルートで有名だ。ビーコン・ロックはポートランドから45分のドライブで、コロンビア・ゴルジュのいい景色と、スッキリとした堅い岩で人気がある。駐車場から最も近いルートの取付きまではたったの徒歩5分である。スミス・ロックへはポートランドから車で3時間かかるうえ、砂漠の中にあるので気候が厳しく、岩質は火山灰が固まった砂っぽいものだ。

ジェフ・トーマスのガイドによれば(Jeff Thomas. Oregon Rock. Seattle: The Mountaineers. 1983)岩壁登攀が許されている南東面に45本のルートがあり、グレードは5.10台が中心で、最長で5ピッチのスケールである。このガイドブックは10年近く前の出版なので、その後のフリークライムの隆盛を考慮すると、現在は100本ぐらいルートがあるのではないかと思う。しかし、クラック主体の柱状節理の岩場なので、スミス・ロックのような高難度のフェース・クライム・ルートがあるか疑わしい。

さてわたしのクライミングはというと、8カ月ほど岩登りから遠ざかっていたので、ゆっくりスタートすることにした。1本目は南東壁ルートを1P目5.7をリード。2本目はすぐ左隣のフィンガー・クラック(5.8)をトップロープで快調に登った。3本目は、Free for Allのリードを試みたが、1P目の途中で敗退し、ややショックを受ける。4本目はビーコン・ロックのクラシックとDod′s Jum(5.10b)の1P目(5.7)をリードした。容易なフェースから、最後はフィンガージャムで狭いビレー・スタンスに攀じ登る36mのピッチは、なかなかのスケールである。

平日で、天気も肌寒さを感じほどだったためか、わたしたちの他にクライマーはいなかった。ハミングバードの遊ぶ清潔な岩場は、また来る気にさせる魅力を持っている。


ロッキー・ビュット(Rocky Butte Quarry)

ポートランド市北東にある州立公園の中の岩場である。元は石切り場だったので、鷹取山のようだが、岩質はもっとしっかりとしている。最新のガイドブック(Mike Pajunas/ Bob MCGown. Rocky Butte Quarry: A Climbers Guide to Urban Rock. 2nd ed. 1989)によれば、17ヶ所のクリフに合計135本のルートがあり、グレードは5.6~5.12bで、スケールは7から40mまでとかなりバリエーションに富んでいる。また公園の上に城塞のような建築物があって、格好のボルダリング場なっている。晴れた日にはマウント・フッドやマウント・セントへレンズを見ながら気持ちよくシェイプアップができる。

この岩場の難点は、散乱するゴミと若干の治安の悪さである。岩場の上からぶちまけられたゴミが取り付きに目につき、岩壁にはスプレーでカギ十字が書かれている。また、上記のガイドブックでは、トップロープのアンカーを、岩場の上端から取らないように勧めている。日本ではありえないことだと思うが、アンカーロープを刃物で切られたクライマーがいたそうである。まさにアメリカらしいアーバンロックではある。