2018年6月2日土曜日

ブラック・ツーリズム ロワール川 サン=ランベール(1)

ドミニクの家の庭
鳥の鳴き声で目覚めました
いまだかってこんなふうに目覚めた記憶がありません。
集積所のゴミを狙うカラスの喚き声で朝の眠りを破られることはしばしばあります。

ドミニクの心遣いで今日は休養と準備に当てます。
ふだんこのように大切にされることはありません。
一人で旅をしていれば早く出発したくてウズウズしているところです。

ゆっくり起きて3人で朝食です…
ここらでは軽い朝食、ガッツリの昼食、そして再び軽る目の夕食というのが標準のようです。

パン、クロワッサン、チーズ、ジャム、紅茶、ジュース
お土産に持ってきた藁竹茅作の竹籠に早速パンとクロワッサンを入れて出してくれました
ジンときますね。

朝飯をさらっとすませたあと庭で自転車を組み立てます。
自転車を入れて運んできた段ボール箱を開けて焦ることなく作業します。
そのあと携行品の最終チェックをしました。
そうそうガスストーブ用のボンベを買わなくてはいけません。

自転車の調子を見がてらドミニクとサン=ランベールの街を走ります。
家から100メートルほどのところにゆったりとロワール川が流れています…

川岸の公園には土曜の朝の散歩を楽しむ人がちらほら
川岸から段丘を上がったところがサン=ランベールの旧市街です。

フランシーズ門と町並み
石造りのふるい教会が建っています。

サン=ジャン礼拝堂
小売の商店もちらほら見えます。

サン=ランベールの青果店
自転車の調子は問題ないので家へ帰ります。
そして明日からのキャンプで必要な食料や雑貨を買いにドミニクと車で出かけました。
新しい居住地区やショッピング・エリアの佇まいはアメリカの地方都市を思わせます。

昼食は庭のパラソルの下で3人でいただきます。
バーベキューの野菜とポーク・ムースというのでしょうか?
ワインと一緒に楽しみました。

もう結構バカンス気分です
すっかりいい気持ちになってしまい食後少し昼寝をしました。

昼寝の後はちょっと庭仕事の手伝いをしました…
ずいぶん背が伸びてしまったバラの枝をデッキブラシで押さえて縄をかけました。

その後また買い出しに行きました。
プリムスというメーカーのガスボンベがなかなかみつからないのです。
サン=ランベールのスポーツ用品店をあちこち回りましたがだめです。
最後はサン=テティエンヌにある登山用品店まで行ってようやく見つけました。

家に帰るともう夕飯の時間でした。
マリー=ポールが作ってくれたネギのお好み焼き(正式名称は失念)をいただきます。
食べているときにドミニクからサン=テティエンヌの町の印象を聞かれました。

この町の名前は以前から知っていました。
あるJリーガーがプレーしたことのあるサッカーチームのある町だったからです。
今日実際に見たその町は正直言ってちょっとくすんだ感じでした。

中心街には五、六階建ての古い石造りの建物が立て込んでいました。
そこを縫うように細い一方通行の道があちこちに向かっています。
土曜の夕方の目抜き通りにはアラブ系の人々が三々五々歩いたり立ち話ししていました。

建物から突き出た看板の「HOTEL」の字体がちょっとレトロだったり。
窓から下げられた旗がながいあいだ雨風にさらされていたままの様子だったり。
厚いガラスのショウウィンドウの向こうにひと気がないことなどに気がつきました。

この町がもっと活気に満ちていた頃の様子を想像するのは難しくありません。
何かのきっかけでこの町のあちらこちらがリニューアルされたらどうなるでしょう。
磨きをかければ目抜き通りも町の真ん中の広場も素敵なところに様変わりするはずです。
くすんだ表情のしたにはきっと往時の輝きが潜んでいるに違いない。

わたしが暮らす川越に蔵造りの街並みというのがあります。
今でこそたくさんの観光客でにぎわっていますが30年ほど前は閑散としていたそうです。
伝統の蔵造りは看板建築で覆われて見る影もなかった。
それが商店主らの粘り強い努力と協力で素晴らしい江戸時代の景観に蘇りました。
たびたび海外のメディアにも紹介されて国際的な観光都市になったのです。

川越の蔵造りの街並み
そういう期待と願いを込めてドミニクには「けっこう良かったよ」と答えました。
良かった理由の説明は忙しかった一日と頂いたワインのせいでシドロモドロになりました。

このようにして旅の第二夜もめでたく暮れました。

サン=ランベール➡グデへつづく