昨夜は大風が吹いて木の葉や小枝がテントに落ちてきました
外に出てみると風は収まっていて空は雲におおわれています
ひさしぶりに肌寒い朝です
8:20 出発
ドミニクは一晩寝てきのうの疲れがとれたようです
「よし!」(私がドミニクに教えた数少ない日本語のひとつ)と元気よく出発!
石橋からドナウ川に沿って追い風に押されながら快調に走ります
10kmも走るとパルテノン神殿のような建物が左手の丘のうえに見えます
ヴァルハラ神殿というその建物の前からドナウの流れがよく見えます
建物の中には大理石で造られたヨーロッパの偉人たちの彫像が並んでいます
右端はアインシュタインかな |
すこし川筋を離れて走っているとパン屋が開いていたので昼食を買いました
このあたりは昔ドナウが蛇行していた沼沢地で土手の上を走っていても流れが見えません
昼ご飯を食べている時、船がゆっくり草の間を横切って行ったので、川の位置が分かりました
草原をゆく列車のようにも見えます
ドナウの南側に張り出した中洲にある町、ストラウビンに立ち寄ります
どの町もたいてい歴史というものがあります
それにしてもこの町の歴史はとても古く、人が住み始めたのは新石器時代です
人類はおよそ1万年前から定住生活を始めたといいますからここは地球最古級の住宅地です
土曜の午後ののんびりした目抜き通りを走り抜けました
Theresienplatz |
Holy trinity column |
Stadtturm tower |
ストラウビンの町を抜けてドナウを左岸(北側)に渡り返し、土手沿いを走ります
16:00
朝からの走行距離が80㎞近くなってきました
そろそろ本日のリミットです
道端にサインの出ているヴァルテンドルフのキャンプ場で泊まることにします
写真のとおりじつに何もない麦畑のすぐ脇のテントサイトです
19:48 夕食
今夜は白身魚のフライにグリンピースと人参の水煮、パン、それにワインです
自転車に乗った縄文人
きょうの昼過ぎにストラウビンという町をとおりました
今から1万年ほど前の新石器時代から人が住み始めたところです
新石器時代は日本では縄文時代の中頃にあたります
それまで人類は食料を求めてあちこちへと移動する生活を400万年ほども続けていました
このような生活スタイルを遊動生活といいます
それがおよそ1万年前の氷河期の終りとともに困難になったのです
地球が温暖化して大型の獣が減少したためです
反面、農耕や漁撈が可能な土地が広がったことで定住生活の条件が整ってきました
人類の長い歴史からみれば定住生活が始まったのはついこの間のことなのです
(『人類史のなかの定住革命』西田正規)
ところでなぜ自転車旅が楽しいのか、自分でもよくわからないでいました
ともかく楽しいのだから、理由が分からなくても差しさわりはありません
それでも、なんでこんなに楽しいのだろう、と時々ふしぎに思っていました
上の本を読んで、遊動生活にそのヒントがあると思いました
人類が長いあいだ営んでいた遊動生活とはいったいどのようなものだったのでしょうか
ざっくりといえばこういうことになると思います
人は獲物の豊富なところを目指してときおり移動をしていました
生活に必要な最低限のものしか携えていなかったはずです
空腹になると獲物をとり、渇きをいやす水を探して飲んでいました
夜を安全に過ごすためにさまざまな注意を払い病気になったときは薬草を使ってなおしました
もちろんすべてが完璧にはいかなかったと思います
それでも遊動生活に必要な知識を蓄え、持てる能力を駆使して暮らしていたでしょう
その生活は厳しくも充実したものだったに違いありません
でなければ幾度もの氷河期を乗り越えながら長い間生き続けられなかったはずだからです
そして思ったのがこの自転車旅です
自転車旅はわたしたちの祖先の遊動生活ととてもよく似ているのです
自転車旅では毎朝どこかへ向けて走り出します
走る時には自動車や道の間違い、天候の急変などに注意します
自転車のほかにはテントや炊事用具、衣類など最小限のものしか携行していません
途中で食べたいものをスーパーで買ったり、噴水や墓地で水を補給しながら走ります
日が傾く前にキャンプ場に着き、夜を過ごしやすい場所にテントを張ります
簡素な夕食をとったあとは昼間一日走った疲れですぐに眠くなります
このように遊動生活と自転車旅の生活スタイルはかなり重なり合っています
そこで縄文人の末裔であるわたしは自転車をこぎながら次のように思い至ったのでした
自転車旅はかつて人類が長いことやっていた遊動生活をいまに再現する営みだから楽しい!
21:20 就寝
<走行距離> 82km(累計 613㎞)
<出費> 27€(食料代 9€、キャンプ代 10€、入場料 4.5€、ビール代 1.5€ 累計 359€)
<Waltendorfキャンプ場の評価> 〇(料金とビールは安い、施設設備はさっぱり)
ヴァルテンドルフ⇒パッサウへ続く