2022年6月5日日曜日

ブドウ畑をめぐる自転車旅 8

出発する時から雨がパラついているとすこし(というかかなり)気が重いものです
走り出して間もなく本降りになりました
雨具を着ることにしました
対岸には昨夜泊まったキャンプ場が見えます
ここでドミニクが何かつぶやきました
すぐには聞き取れませんでした

La pluie du matin n’effrai pas le pèlerin.

と言っているようです
「巡礼者は朝の雨を恐れない」ということかな

巡礼者とはサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路をたどるようなカトリックでしょう
この言葉は四国のお遍路や日本一周の自転車乗りにもぴったりとあてはまる言葉です
いままさに雨に打たれている私たちにはもちろんのこと

間もなくソーヌ川を離れて運河に沿って走ります
ドミニクのつぶやきが効いたのか晴れ間が出てきました
ジュラ県の小さな町 Dôle に着くころにはすっかり青空になりました
1822年にこの町でルイ・パスツールという科学者が生まれました
パスツールの生家の前の通り
その生家を訪ねてみました
そして彼の業績の中に今日でも重要なものがいくつもあることを知りました

例えば牛乳・ビール・ワインの低温殺菌法(パスチャライゼーション)の開発です
ワインやビールはこのところ毎日飲んでいますし日本では焼酎の牛乳割りを愛飲しています
パスツールの生家
またワクチンの予防接種という方法を開発したのもこの人です
コロナ禍中でも海外旅行ができるのはワクチンを接種したからです
パスツールはこれらの他にもたくさんの業績を遺しました
私たちの日々の生活は多くの科学者のたくさんの業績に支えられています
そのような恩恵を受けていることを年に一度くらいは思ってみるのもいいでしょう
そんな殊勝な気持ちになれるのも旅の良い所です

Dôle の町から川沿いに東へ向かいます
Dôle のカトリック教会
しばらく走っていると背後から巨大な積乱雲が迫ってきました
雷雨の兆候です
私たちはもうすぐ雷雲に飲み込まれます
Ranchot のキャンプ場についてチェックインを終えるや否や猛烈な雷雨になりました
ようやく雷雲が去ったのでテントを設営します
今夜のワインはわざわざ Dôle から運んできたものです
産地はロワール川のほとりの Saumur です

ワインを飲みながら夕食を食べました
人心地つくとドミニクがつぶやきました
On a bien géré.「とてもうまくいった」という感じの表現です

今日は昼過ぎ Dôle を出発するあたりから雲行きが怪しくなりました
日はサンサンと照りつけるのですが大きな雲が強い風に吹き流されてくるのです

これからどうするか二択でした
深い森を横切って Arc et Senans まで直行するのがひとつ
もうひとつは La Doubes の川に沿ってキャンプ場を通り過ぎながら Ranchot まで行くかです

話し合って後の方にしました
前者だと雨宿りする所のない森の中で雷雨につかまる恐れがあります
後者であればもしもの時にはキャンプ場に逃げ込むことができます

結果は思った通りでした
Ranchot のキャンプ場に着いて間もなく激しい雨が降りだしたのです
そんなことを思い出しながらドミニクはつぶやいていたのでした
On a bien géré.

<走行距離> 54㎞(累計 226㎞)
<出費> 30€ (累計200€)