2022年6月6日月曜日

ブドウ畑をめぐる自転車旅 9

Saline Royale
ドミニクと私の自転車旅は一日平均50㎞しか走らないゆっくり旅です
それでも長旅ですのでだんだん疲れてきます
走るだけでなく見て歩き、買い出し、設営・撤収などもするからです

楽しい旅を続けるためには過労は大敵です
あくびの頻発、ささいなことに不寛容、万事に無関心などは疲れすぎのサインです
これを放っておくとトラブルや事故の原因になります

ドミニクのポリシーは一週間に一日は移動しないで休養すること
私たちは6月1日から走り始めてもうすぐ一週間なのでそろそろ休養のタイミングです

今日は空身で王立製塩所(Saline Royale)の跡を見学に行きます
場所は Ranchot のキャンプ場から森の中のまっすぐな道を17㎞ほど走ったところです
そんな辺鄙なところになんで王立の製塩所を造ったのか見学してわかりました
18世紀の後半頃のフランス王国では塩税が国家収入の3割を占めていました
収入基盤を安定させるために王国は自ら塩を生産することにのりだしたのです
この壮大な製塩所は国王がルイ15世だった1775年に建設が始まりました
製塩所の周りは理想的な工業都市として整備される計画でした

当時塩は大変貴重で高価なものでした
それを独占的に生産して王国の財政基盤を堅固にすることにしたのです

まず山中から湧き出す塩水を20㎞以上の暗渠で製塩所まで運びます
その塩水を広大な森の薪を焚いて沸騰させ製塩が1778年から始まりました

その後にフランス革命が勃発しまた産業革命が進行して政治経済環境が激変しました
製塩技術の発達と鉄道網の建設は製塩所にとって直接的な打撃になりました
製塩所はすっかり時代遅れになりついに1885年には操業を停止してしまいました
理想的な工業都市をつくる計画は頓挫して広大な空地が残されました
夏草や・・・
塩は古代から世界のあちらこちらで作られた重要な製品であることは知っていました
きょうこの製塩工場跡を見学してさらに興味深いことをいくつか知りました

まず人は1から2gの塩をとるのがちょうどいいこと
アリストテレスに『二コマコス倫理学』という著作があります
その中には善い友を持つには長い年月を共にしなければならないと書かれています
どのくらいかというと56リットルの塩を食べる期間ということです
塩の比重は2.16で水のおよそ倍なので56リットルというとおよそ116㎏=116,000gです
二人で毎日に4gの塩をとったとして116,000gとるには80年もかかります
長い!

人間が食べるのは全体からすればわずかですが健康への影響は大きいものがあります
ちなみにWHOは1日の塩分摂取量を5g以下にすることを推奨しています
みなさんできてますか?

フランスで塩が食用に使われる割合は全体の約10%です
道路の凍結防止のための融雪剤には約30%も使われています
このことが環境に大きな影響を与えているのではないかと想像します

世界で生産される塩のうち食用はわずか6%です
その他水質調整に12%、道路の凍結防止剤に8%、農業に6%使われています
あとの68%は塩素、塩酸、水酸化ナトリウムなどの原料として使われています


製塩所の裏手に珍しい自動車がたくさん止まっていました
戦後10年間だけ存在したフランスのメーカーの Facel Vega というビンテージカーでした



なぜかシェヴィーのインパラも

製塩所の脇に植物園があってOtaという素焼きのツボを潅水に使っていました
Ota
下り坂で最高速48㎞/hで走りキャンプ場に帰ってきました

キャンプ場はこの中洲にあります
生ビールを飲みながらペタンクを観戦します
夕食はグリルサーモンとパスタでしたので珍しくロゼを飲みました
そんなこんな楽しい一日でしたが結構くたびれました
すこしは休養になったかな?

<走行距離> 36㎞(累計262㎞)
<出費> 27€(累計227€)