2022年6月1日水曜日

ブドウ畑をめぐる自転車旅 4

天気はいまひとつパッとしないですが予定通り今日出発します

ここで一つ問題が起きました
私のガラケーが充電できないのです
アダプターを新しいものに替えたことが原因のようです
カメラなどのバッテリーには普通に充電できますがガラケーだけできません

ジョナタンまで加わって皆であれこれやってみましたが駄目です
仕方なくドミニクのお古のサムスンのガラケーに私のガラケーのSIMを差してみました
通話はできませんがローマ字のショートメッセージを私の息子に送ることはできました

ドミニクにも送れましたがドミニクから私へは送れません
一方通行です
それでもなにも無いよりはマシなのでこれを借りていくことにしました
「いざという時はプリペイドの携帯電話を買えばいいよ」とジョナタンが教えてくれました

これまでの旅でも私はガラケーで済ませてきました
携帯をひっきりなしに眺めるような旅は興ざめだと思っています
旅だけでなく日常生活もそうだと思います

ドミニクもガラケー派だったので分からないことがあれば人に聞きながら旅をしてきました

それにしてもこのようにガラケーも使えないとなるとこれはさすがに不便です
1か月我慢するしか仕方ありません

ちなみにドミニクは2年前にガラケーを携帯に買い替えていました
私はいまや絶滅が危惧される最後のガラケー世代かもしれません

ガラケー問題で出発が遅れました
午前9時にドミニクの家から出発点の Montceau-les-Mines まで車で向かいます
距離は180kmほどで車を運転して帰るマリ=ポールも同乗します
2時間ほどで Montceau-les-Mines の川沿いの駐車場につきました
出発の準備を整えてここでマリ=ポールとはお別れです
「有り難う」

できることはただ一つ
この旅を無事にドミニクと完遂することです

昼少し前に川に沿ってそろそろと走り出しました
時々雨がぱらつくような天気です
ドミニクは厚手の長袖を着て走っています
これまでより寒さや暑さへの対応が難しくなっているのだろうと思いました
Montchanin の池のほとりに手頃なピクニックテーブルを見つけたので昼食にしました
マリ=ポールが作ってくれたサラダを食べます
そこから運河の閘門(こうもん)が4つ続くところがありました
下流に向かって走っているので快適に下って行きました
午後4時に Santenay のキャンプ場に着きました
Santenay はブルゴーニュの「黄金の丘(Côte d'Or)」の南の入り口です
ここから Dijon まで南東方向にひらけた斜面が続いています
ここでフランスを代表する赤と白のワインのブドウが育てられ醸造されているのです

このキャンプ場の料金は一人一泊6.75ユーロ(1€=140円として945円)でした
フランスはドイツやオランダに比べて物価が安い感じがしました

テントを張り終えてから Santenay の街の小さな食料品店に買い物に行きました
ブルゴーニュのブドウ畑に着いた第一夜なので Santenay の赤でも飲みたいと思いました
店の棚にはたくさんワインが並んでいますが Santenay産のものが見当たりません
ドミニクが店番の女性にたずねると「特定のものだけを置けないので」という返事でした

なるほどね
Santenay産といってもたくさんの銘柄がありそのすべてを店に置くことはできません
かといって特定の銘柄だけを置いたのでは街の小さな食料品店として差し障りがあります
「Santenay産を味わいたいのなら酒倉(cave)で買えますよ」と場所を教えてくれました

その酒倉の入り口の戸に「海外発送します」と張り紙がしてありました
六か国語ぐらいで書いてあり一番下が日本語でした

その戸を開けて中に入ると大きな部屋の棚いっぱいにワインが並んでいました
その真ん中に大柄の若い男性がにっこり愛想笑いをして立っていました

ドミニクが彼に「日本の友人がSantenayのワインに興味を持っているんですが」と言いました
日本の友人とはもちろん私のことです

とその男性はかたわらの大きな机を前に座っていた年かさの男性の方を見ました
髭を生やしたその人は「Santenayのワインは19€からあります」と言いました

ドミニクは即座に私の方を振り返りました
その目が何かを強く訴えています

ドミニクはたしかこれまでにもこういう目をしたことがありました
あれはそう4年前 Nantes でドミニクに寿司をごちそうしようとした時でした

私達は繁華街の手頃そうな寿司屋に入り椅子に座りました
私はドミニクに「何にする?(Qu'est-ce que tu veux ?)」と品書きを手渡しました
するとそれを見たドミニクがこういう目をしたのです
それはつまり「高すぎる!(Ça coûte trop cher ! )」ということです
品書きなど見せないで注文してしまえば良かったと思いました

そのことを思い出す間もなく私は反射的にドミニクに目で「 Non!」と言いました

そのあとドミニクが店の人に何といったのかよく覚えていません
まさか「高すぎる」とは言いませんでしたがあの状況で何と言ったのか?

私達はスゴスゴと酒倉から出ました
そしてまた食料品店に戻り Bourgogne と大きくラベルに印刷された赤ワインを1本買いました
8.8€でした

私は「19€から」の「から」が到底受け入れられませんでした
「から」でなく「まで」なら少しは考える余地があったのですが・・・
<走行距離> 44㎞
<出費> 25€(食料代14€、キャンプ代6.75€、酒代4.4€)