私はそのことをとくに気にしたりはしませんでした
それでも小学校生活の中でうまく自己表現ができないモヤモヤした気分はあったかもしれません
そんな時に遠足で行った弘法山は、私のそんなモヤモヤを一時的にではあれ吹き払ってくれました
親さえも気が付かなかったと思いますがそれはにとっては会心の出来事だったのです
なぜなら私は弘法山での山登りを全身で楽しむことができたからです
それは標高わずか235mの小山でのことでしたがそんなことは関係ありませんでした
私は山坂を歩き、稜線からの眺望に見惚れ、みんなと昼食したことが楽しかったのです
弘法山への登山は小田急線の大根(おおね)駅(現東海大学前駅)から始まりました
駅から北に向かうと道が徐々に傾斜を増してきます
住宅地を少し登って振り返ると、自分たちがすでに山の麓に差し掛かっているのが分かりました
道の傾斜がどんどんきつくなると、前方に弘法山の稜線が見えてきました
このあたりで早くもバテて足がなかなか前に出ない生徒や先生が出始めました
私は元気いっぱいでした
バテた友達の手を引いたり、先生のお尻を押したりして、苦も無く稜線に立ちました
そこからは大山の頂上へつづく稜線が大きく望めました
稜線を西へ辿っていくと、大山から丹沢へと続く山並みが視界に大きくなってきました
私の気持ちは大きくふくらんで、雲の上を歩むような心持ちで弘法山へと向かいました
弘法山の山頂付近で昼の休憩をとりました
こうしてみんなでいい景色を眺めながら昼食を食べることがこんなに楽しいとは思いませんでした
私たちは昼食を終えて山頂から下り始めました
これまで穏やかな尾根歩きと打って変わって急な下り坂でした
おじけづいて動けなくなる生徒や尻餅をつく先生が続出しました
誰かが転ぶたびにキャーと悲鳴を上げていました
私はぜんぜん平気で駆けるようにして下っていきました
山登りとはなんて楽しいものだろうと思いながら