2022年7月1日金曜日

ブドウ畑をめぐる自転車旅 34

4:25 空港の中を歩いていると「HEMA」という名前の店がありました
   これは私のことかと笑ってしまいました
6:00 PCR検査の結果はめでたく陰性でした
11:20 エミレーツ航空のチェックインの大行列にならびました
    誘導係の人にこっちへ来いと言われなぜか列の先頭の方に並び直しました
    チェックインカウンターには昨日の係りの女性がいました
    私がチェックインできたことを喜んでくれました

12:30 こんどは危険物検査の大行列に並びました

今日のスキポール空港はこれまでわたしが見たどんな空港よりも混雑してます
飛行機が定刻に離陸できるようチェックインカウンターは通常より早めにオープンしています
そして誘導や受付の人はなんとか早くチェックインさせようと懸命です
その努力もその後の危険物検査と出国審査がのろくて水の泡です

どこが危険物検査場か全く見えない遠くのところが行列の最後尾になっています
列は空港内をグルグルグニャグニャと続きいつ検査を受けられるのか全く分かりません
搭乗時刻が差し迫って気がせくのか割り込みをする人がちらほら出てきました
旅行前のうきうきした雰囲気はなくみんなうんざり顔になっています

わたしのすぐ後ろにひときわ焦っている太鼓腹のおじさんがいました
その人は行列のヘアピンカーブ地点でするりとわたしの前に入りました
外見からは想像できな体の柔らかさでした

おじさんは行列の行方を首をのばして何度も見ますがまだ検査場は見えません
その首すじに玉の汗が浮かんでいます

おじさんは遂に我慢できなくなって傍らの係員にお願いしました
「あと40分で搭乗ゲートが閉まってしまう!前に行かせてください」
係員の「わたしにイエスという権利はない」という答えにおじさんは泣きそうです

列が少し進んでから別の係員にまた「行ってもいいですか?」と聞いています
これもまた「だめです」とのつれない返事

この目立つおじさんの行動をわたしを含め周りの人々が注視しはじめました
わたしはおじさんと目が合ったとき「行っちゃいなよ!」と目で合図しました
するとおじさんは何か覚悟を決めたように見えました

いよいよおじさんはどうするのかとみんなが見詰めていたその時です
おじさんの前に並んで居た細身の中年男性が「お先にどうぞ」と先を譲りました
おじさんは「ありがとう」と言って約50㎝前に進みました

それはこの何千人という大行列の中のわずか一歩の前進ではありました
ただの一歩ではありましたがわたしにはそれがじつに清々しく見えました
今の自分にできる最大限のことを何の見返りも期待せずにすること
これがシンの善だと

もしこの行列の全ての人がおじさんに一歩譲ってあげればおじさんは先頭まで行ける
すばらしい!

13:50 つぎは出国審査の大行列に並びました

14:30 ようやく搭乗予定のフライトの出発ゲートに着きました

18:20 搭乗した便は定刻より3時間遅れてドバイに向けてスキポール空港を離陸しました

<走行距離> 0㎞(累計1,379㎞)
<出費> 7€(累計1,754€)