皇海山は地味な山だ
麓からもっと遠くからも見えないのでその存在を知らなかった
百名山の中に入っていなかったら登らなかっただろう
川越からは近いのでちょっと油断して朝急に車で出かけた
それでも日帰りでは登れない
途中庚申山で一泊して翌日皇海山に登る計画だ
桐生あたりから渡良瀬川をずっと遡っていく
足尾銅山の手前で左手に入り庚申山の麓に行く
標高900mのところで林道は閉鎖になっている
そこから車を置いて歩いて行く
林道を一時間ほど歩き、さらに沢沿いに一時間半ほど登ると庚申山荘に着いた
今夜の宿泊客は私だけらしい
食料をあまり買わないできてしまった
夕食を食べたらほとんど食料がなくなってしまった
翌朝はほんの軽い朝食を済ませて出かけた
庚申山を過ぎると道がどんどん険しくなってきた
鋸山を過ぎると道がわからなくなってきた
ともかく鍛え稜線通しに行けば皇海山に着くことはわかっている
そうは言っても倒れた木や生い茂った熊笹が道を阻んでいる
樹林帯で眺めは効かない
それでも一度皇海山の特徴ある山頂が見えた
禅僧のような佇まいだ
黙々とヤブコギを続けて山頂に着いた
山頂にも木が生い茂っていて眺望は効かない
ただここがあの山頂なんだと思った
下山を始めるとようやく空腹を感じだした
朝食の後は水しか飲んでない
庚申山を下る頃には空腹のため足がふらふらしてきた
ようやく林道に出て少し歩いたところの道端で食事をしている人たちがいた
何かおいしそうな物を食べている
もう我慢ができなくて恥を忍んで「何か食べるものを分けてもらえませんか」と頼んだ
その人たちはちょっとびっくりした様子だったがゆで卵やパンをくれた
それを歩きながら食べた
これまで山登りをした中でこういう経験をしたことはなかった
バカだなあと思った