1982年4月28日水曜日

剣・立山

 春の剣岳にスキーでアプローチして、岩場でクライミングするというぜいたくなプラン。実は1978年5月に今回と同じような計画をたて、ヨーロッパアルプス登山を前にしてMさんと来たことがあった。その際は天気が崩れて岩登りはできなかったが、剣沢と平蔵谷のスキー滑降は楽しむことができた。今回は前回よりもさらに天候に恵まれず、チームワークが悪かったことも手伝った、さんたんたる結果だった。

 夜行の急行アルプスが信濃大町に着く頃には、空がどんよりとして、雨雲が「いつでも降らすぞ」とばかりにわたしたちを見下ろしていた。


 黒部ダムを経由して、室堂平に出る。


 一面の雪の原は、それはそれで気持ちが良いのだが、なんだか薄暗くて陰気である。雷鳥沢には大きく右側から回り込んで取りついた。その広大な斜面を正面から登っていく頃になると、雨粒がポツポツ落ちてきた。間もなく本降りになり、風も出てきた。ようやく別山乗越にたどりついた時には、体がかなり濡れてしまった。早くテント場へ行ってそこで休もうと、スキーで滑りにかかる。パーティーの足並みがばらばらで、どうしようもない。テント場につき、急いでテントを張って中に入る。全身ぐしょ濡れで、歯の根が合わないほどがくがく震えがくる。雨はぜんぜん降りやまず、わたしはとうとう寝袋と羽毛服を濡らしてしまった。これではいけないと、剣沢小屋へ行って、それらを乾燥させてもらう。そんなことをしているうちに、とうとう小屋にいる時間の方が長くなってしまった。


 そうして何日も天気待ちをしているうちに、下山予定日になってしまった。


 別山乗越に登り返し、雷鳥沢を下り、山崎カールの下を横切り、一ノ越に上がって、タンボ沢経由で黒部平へ滑りこむ。この下山日が一番楽しかったとは寂しい限りである。

別山平で

 雨が降ったら降ったなりに行動の仕方があると思う。来たるべき日に備えて、ザイルで確保しながらスキー滑降するとか、ずぶ濡れになることを覚悟してスキーの練習をするとか、やるべきことはあったと思う。それができないのは、メンバーに力がない証拠に思えて仕方ない。


1982年4月18日日曜日

天神平スキー場

 スキーツアー時に想定される遭難への対策として、天神平で訓練をした。

 TSMC代表のDさんと初めて会う。会員の前評判にたがわぬ変人という感じがする。トリックターンというのをやらされた。前にどこかでやらされたことがあったので、スイスイとやってしまったら、Dさんは面白くなさそうな雰囲気だった。


 会員でこれといって良い滑りをしている人はいなかった。下りはAさんと田尻沢を滑降する。


1982年4月11日日曜日

遠見尾根から鹿島槍高原

 TSMCでの山行計画が中止になったので、山スキーツアーを兼ねて神城山荘に残置してあった荷物を取りに行く。山荘の中には誰もいなくて、いつもながらガランとしていた。もうここへ来ることもないだろうと思い、内も外も良く見わたした。

 五竜とおみスキー場のチャンピオン第2リフトを使って1時間ほど足馴らししてから小遠見山へ登る。


 天気が良く、後立山連峰が良く見わたせる。小遠見山の山頂で昼食を食べて、天狗岳の稜線に入る。


 この稜線は、神城山荘から何度も仰ぎ見たところだ。稜線には思ったよりアップダウンがあり、夜行列車で寝不足だったからだにこたえる。手や足が少しつりだしてきた。ビンディングがマーカーTRなので、緩斜面でかかとを充分あげられず、苦しい。天狗岳からの下りは、尾根幅が狭いうえに傾斜が急なので、初心者だとアンザイレンが必要だ。


 鹿島槍スキー場に出るところで雪が無くなってしまい、楽しみにしていた滑降は出来ずじまいとなる。スキーを担ぎ、足をひきずって簗場駅まで歩いた。


神城山荘使用細則

  1. 基本となる生活時間

  起床 7:00 朝食 7:30‐昼食 12:00‐夕食 18:00‐就寝 23:00

  1. 使用者が分担する仕事

    1. 買い出し

    2. 調理

    3. 食事の後片付け

    4. 掃除

    5. 燃料補給

    6. 風呂わかし

    7. ゴミすて

    8. 雪かき

  2. 備品の使用

山荘内の備品は大切に使用し、使用後はもとの位置に戻しておくこと。また、山荘内にあるわたし物を使用したいときは、あらかじめ持ち主の承諾を得ること。

  1. 飲酒

酒ビンを持ち込んだ場合は、空ビンを残置せず持ち帰ること。

  1. 喫煙

山荘内でタバコをすう人は、常に火の始末に注意すること。

  1. 就寝時間の厳守

就寝時間以降にやむを得ない事情で会合する場合は、各自の部屋において、同室者の了解を得た上で行うこと。

神城山荘マニュアル

<買い出し>神城で品揃えの良い店は大北農協(土の午後と日は休み)です。酒類などは   で年中無休。大量のときは白馬駅前まで行く。

<調理>煮炊きをする際には火気と換気に充分注意しましょう。ごはんは1回(約3十分)で2升位炊くことができます。20名以上宿泊する場合は2回炊く必要があるので早めに作りはじめましょう。使用した調理用具は元のところに戻し、ガスの元栓をしめておきましょう。

<食事の後片付け>山の水は冷たいので、お湯を使うと楽です。ただボイラーは風呂と共通なので、早く風呂を沸かしたい場合はなるべく節約しましょう。食卓・カウンターを清潔にしておきましょう。

<掃除>まずみんなでちらかさないように気をつけましょう。ホールはみんなが利用するスペースです。おいてあるわたし物は持ち主にわたし、部屋に持ち帰ってもらいましょう。クズカゴにたまったゴミをかたづけましょう。また灰皿にたまったすいがらは喫煙する人に捨てさせましょう。

乾燥室のスキー用具や靴は出入りのじゃまにならないようにきちんと整理しましょう。アフターブーツなどは棚に入れておきましょう。またスキー修理台のまわりもきれいにしておきましょう。

トイレが特に汚れている時にはデッキブラシで洗い流しておきましょう。紙がなくなっていたら補充しておきましょう。

<燃料補給>風呂ボイラーと石油ストーブのタンクに石油を補給しておきましょう。石油は入口のタンクから20Lポリタンに移しておきますが、もしタンクが空になっていたら、電動ポンプをタンクにそなえつけ、ドラムカンをタンクのそばに運んできて、ポンプで石油を満タンにしておきましょう。

<風呂わかし>

  1. 浴槽に水を20㎝位の深さに入れておく。

  2. 浴槽の給湯蛇口を全開にし、浴槽のフタをしておく(蛇口の下だけはあける)。

  3. 揚水バルブを全開、給湯バルブを全閉。

  4. バーナーに点火する。

まず、バーナーの送風つまみを②、燃料つまみを⑧にする。点火棒(ストックの先に布をまき石油をひたしたもの)に火をつけバーナーの燃料噴出口にかざす。燃料つまみの横の黒いボタンを押すと火がつく。

  1. ボイラーから給湯バルブへむかうパイプがあつくなってきたら給湯バルブを全開にする。

(注意)揚水バルブの上のタンクの水がお湯になってしまったら、バーナーを消すこと。原因は水圧不足かバーナーの火力の強すぎなどが考えられる。

<ゴミすて>台所の生ゴミ、くずかごのゴミは山荘うらのゴミすて場にすてましょう。雪がつもっていたら、それを掘ってそこに捨てておきましょう。ゴミの中にもえるものがあったら石油をかけてもやしておきます。ビンやカンは捨てないで、指定された場所にまとめておきましょう。

<雪かき>

出入口 階段にはスリップしないよう段をつけます。

山荘の周囲 1階の窓ガラスが雪で割れることがあります。すきまをつくってガラスが割れないようにしておきましょう。

屋根 50㎝以上つもったら雪おろしをする必要があります。やるときには転落に注意しましょう。

神城山荘の四季

1月 4日どんどやき

   15日わかどし

2月 霧氷の花

4月 1日姫川の川魚解禁、コブシ、柳ボボ・フキノトウ、ワラ

ビ、ゼンマイ、コゴミ、

タラノメ出はじめ、フクジュソウ

残雪と花:カタクリ、ザゼンソウ、ミズバショウ、コブシ

5月 野の花咲きそろう:ウメ、モモ、アンズ、サクラ、コブシ

   中旬白馬の雪形と田植え

   春まつり

6月 初旬ワラビ最盛期、レンゲ、ツツジ

7月 下旬白馬岳お花畑最盛

8月 13日旧盆、盆踊り

   カブトムシ、ホタル

9月 ウマオイ、コオロギ、マツムシ

   山ぶどう、くり、あけび、きのこ

   シメジ、ナメコ、マツタケ、クリタケなど

   秋まつり

10月 山の頂から麓へ次第に紅葉が降りてくる(7段紅葉)

   下旬白馬連峰初雪

   秋の収穫

11月 野沢菜洗い・漬け込み

   山麓積雪この頃から

12月 スキー場開き

神城スキー場