今日は岩手山に登る予定だった
長時間歩くことになるだろうと思って朝早く馬返しを出発した
ところが10分も歩かないうちに入山規制の看板が行く手を遮った
噴火警戒レベル2が発令されているのだ
そのことに気がつかずにここまで来てしまった
迂闊な登山者でも必ず気がつくように道にトラ柄のロープが張られている
それを跨いで先に行けないことはないが止めておく
そこまでして登ることはない
人生の時間はまだもう少しあるから
今日の行先を早池峰に変えた
馬返しの駐車場に戻り車に乗って河原の坊へ向かった
馬返しから一時間半ほどかかって河原の坊の駐車場に着いた
駐車場には他に車が三台停めてある
車道はこの先の小田越へと続いているがそこには駐車場がない
ここに駐車していくよう看板で指示されている
一時間弱歩けば済むことだからこういうことには逆らわない方がいい
河原の坊から直接早池峰の山頂へ向かうルートもある
しかしこちらは斜面崩落でしばらく前から通行止めになっている
なので河原の坊に車を置いて小田越経由で山頂へ向かうしかない
早池峰では携帯トイレを持参することが求められている
大きいほうだけでなく立小便もしてはダメだ
なので携帯トイレを500円で無人販売している
それは買わず下山してくるまでトイレを我慢するつもりだ
多分大丈夫
河原の坊から小田越へは樹林帯のなかを緩く登っていく舗装道路だ
新緑の朝に響く鳥の鳴き声が気持ちいい
この一帯が特別に保護された地区であることを示す看板が幾つも立っている
小田越には人が4人いた
これから登り始めようとしている3人組と小田越の監視人らしき1人
3人組は何か警察か役所関係の人のような感じがする
あくまで直感だが仕事で来ていると思う
監視人らしき人は来月初めの開山に向けた準備をしている
登山者カードに記入して箱に入れる
「緊急時の連絡先」は空欄のままだ
監視人の人に行ってきますと挨拶した
すると「1合目と9合目に雪渓が残っているから踏み抜かないように気を付けて」と言われた
スポーツ飲料水を一口飲んでアオモリトドマツの林に作られた木道をゆっくり歩きだす
傾斜は緩く息も上がらない
一合目の雪田を越えると3人連れが立ったまま休んでいた
年長の1人はかなり汗をかいている
あいさつして追い越した
あたりに背丈の低い山桜がハイマツの間で可愛らしい花を咲かせている
何という花だろう
さらに登って行くと道はごろごろと歩きにくい岩の上を行くようになる
何種類か高山植物がちいさな花を咲かせているがこれも名前が分からない
5合目を越えると道はかなり急になり上部には鎖場がある
上り下り二本のルートがあるということはシーズン中は渋滞するのだろう
それを越えると稜線に出た
山頂の岩の間に遊具のような色をした山小屋が少し見える
なだらかな道を行くと山頂の手前に雪田があり小屋まで続いていた
この避難小屋は一昨年完成したばかりでまだきれいだった
山頂1917mに9時半に着いた
河原の坊の駐車場から3時間弱だった
自分もまだ普通程度には歩けるなという印象
山頂には夫婦らしき二人があちこち歩きまわっている
鉄製の祠は扉は固く締められているので隣りの鳥居を拝んだ
ステンレスの剣が何本も立っている
昭和43年などと記されており50年以上前のものだが銀色に光っている
眺望があまり効かないので早々に下った
途中で小田越の監視人の人が道沿いにロープを張る作業をしていた
小さな桜のことを聞いたところミネザクラとのことだった
このところ下山時に足がつることが多かったが今回は大丈夫なようだ
スポーツ飲料を意識的に飲み続けたからかもしれない
登ってくる結構な数の登山者とすれ違いながら小田越まで下った
指示に逆らって路上に駐車している車は1台も見当たらない
河原の坊への道すがら早池峰の山頂を何度も見上げた
高山植物の宝庫といわれるこの山のことを知ったのはもう50年以上も前のことだ
その山に今日こうして登ることができた
車やらトイレやらいろいろ規制のうるさい山だがきれいなことは確かだった
道端にはゴミ一つ落ちていないし木肌にナイフで落書きされていることもなかった
こういう将来に残す特別な山があってもいいと思った
今回の早池峰で百名山を80峰登ったことになった
あとの20峰はこれから毎年4峰ずつ登ることで75歳には全山登頂を達成しようと思う
ところで帰ってから調べたところ小さな花はヒメコザクラとナンブイヌナズナだった
監視人の人が教えてくれたミネザクラはタカネザクラの別称だそうである