1983年10月20日木曜日

米子沢

 社学事務所の人間と紅葉狩りがてら大学の創立記念日の休日を使って沢に行った。正道の車で行き、彼が学生のときに在籍していた生物研究会所有の「いなごの小屋」へ泊まる。いいところだ。翌早朝、米子沢の出合の米子橋まで車で入る。
 沢の入口には遭難注意の立て看板があって、それを鵜呑みにすると、沢登りが禁止されているのではないかと錯覚するほどの内容である。その看板の注意を無視しない程度に承って、おもむろに入谷する。河原のゴミの多さが気になるが、これは入谷者の多い証拠である。ゴーロを行くと正面に紅葉をまとったナメが美しい。天候はかんばしくないが、それでも都会では見ることのできない自然の錦である。そのナメの下を過ぎる辺りから、ボツボツ滝が現れ始める。MとKの足並みを見ていると、その生まれ育った環境の違いを感じてしまう。Mは浅草蔵前という下町育ち。Kは高知の窪川という山と海に挟まれたところで生まれ育っている。Mの歩きは危なっかしいが、Kはどんどんスタスタ行ってしまう。
 ゴルジュを行くと、大滝が沢幅いっぱいに懸っているので、左岸を大高巻きする。再び沢に降り立つと、そこからきれいなナメが続いていた。そこをわらじのフリクションを効かせてヒタヒタ登ると、流水が細くなり、やがてヤブ漕ぎもなく源頭になる。景色の全く見えないガスなので、山頂へは行かずに下山する。
 いなごの小屋」にもう1泊して帰京した。