1978年4月23日日曜日

原小屋沢

原小屋沢で
 WLSKはスキーだけでなく、希望者は山登りもできるようにした。このことは、無雪期は体力づくりのために山登りすることが可能になる。一方で、十分な準備をせずに山登りしてしまう可能性を大きくすることになる。
 わたしはこの山行で、参加者の力量を知らないで山に行くことの恐ろしさを身に染みて経験した。メンバーは、わたし以外は女性3名だったが、そのうちの1名がまったく山登りを経験したことがなく、基礎体力もきわめて低いひとだった。他の2名は数年山登りの経験があったので、1人くらい全くの初心者がいても大丈夫だろうと思った。
 わたしの判断がまったく間違っていることに気がついたのは、原小屋沢という丹沢では中級にランクされる沢の核心部に着いたあたりだった。
 初心者にありがちなことだが、不安定な岩の上や、へつりでの歩行で、足の置き場が悪くスリップすることがある。わたしは、基本的なことを口頭で教えたので大丈夫だろうと思い、ちょっとした(とわたしが思った)へつりの場所を通過させた。その時この初心者がスリップして滝ツボに落ち、下半身がずぶ濡れになった。
 つぎに階段状の滝のところで、だんだん登って行くうちに恐怖心が強くなり、岩にへばりつくような姿勢になって、自分では動けなくなってしまった。ザイルがないので確保することもできなかった。仕方なく、もろともに転落する恐怖にかられながら、手や足の置き場を1歩1歩教えながら、滝の取り付きまでようやくのことで戻った。
 わたしはこの山行は遭難の一歩手前まで行ってしまったと、深く反省した。