1979年8月3日金曜日

大雪山からトムラウシ

8月3日

 Yと羽田空港からジャンボジェットで千歳空港へ飛ぶ。千歳空港からはバスで札幌駅へ行き、ここで大急ぎでラーメンを食べ、網走行きの夜行列車に飛び乗る。夏の北海道は、どこでも若い人でいっぱいだが、この列車にはとりわけ若い連中であふれている。


8月4日

 未明に上川に着き、駅の待合室で寝ようと思ったが、そこは人でいっぱいで寝る場所がなかった。しかたなくバスの待合所のようなところで寝る。8時頃に起きて朝飯を食べに行き、ついでに山の中で必要な食糧の買い出しも済ます。14時のバスまでやることもなく、芝生の上でごろ寝をして過ごす。


 愛山渓行きのバスは、定員の3分の1ほどで上川を出発し、いったん旭川方向に戻ってから左に曲がって山の中へ入っていく。道の両脇には、葉の直径が1mほどもあるえエゾフキがいっぱい生えている。バスが狭い山道を登りだすと、しばらくで終点の愛山渓温泉についた。小屋の周りでテントを張ってもかまわない、というのでテント泊にする。温泉に入り、夕飯にジンギスカンを食べ、明日の用意をして寝る。


8月5日

 雲がたれ込めており、山の上は雨が降っているのではないかと思われた。初めは沢どおしに登り、2時間ほどで沼ノ平に出る。散在する沼の間を抜け、1か所沢を渡渉して、裾合平に出る。ここから、中岳をめがけて登る。といっても、中腹から上は雲に隠れて見えない。途中中岳温泉で昼食にしたが、寒いので早々に出発する。稜線に出ると、雨まじりの強風が吹きつけてきたので、ほとんど休まずに白雲岳のテント場まで歩いて、そこでテント泊した。


8月6日

 早朝は快晴だったが、間もなく曇りだした。白雲岳のテント場から忠別岳までは、上り下りが少ない道だ。途中平が岳付近から大雪高原温泉が見えた。広い草原のような稜線をのんびりと気持ちよく歩く。忠別岳、五色岳と少し山らしいところを過ぎると、また広い高原状のところを行く。化雲岳の下を巻き、道はトムラウシ方向に南下する。今日はヒサゴ沼で幕営する。ここまで張り切り過ぎたのか、くたびれて調子が良くない。

8月7日

 今朝もガスを出発である。それでもトムラウシに近づくにつれて天候が良くなってきた。北沼に着く頃には、トムラウシが青空のなかにくっきりとそびえたつように見えた。一気にトムラウシの山頂に登ると、とてもいい気分だった。ここまで来たかいがあった。休んでいると、後続のパーティーが次々とやってきてにぎやかだった。


 ここから、十勝連峰へ向かう道に入る。三川台まではのんびりした尾根である。ここから山道が南下すると、とたんにひどいヤブ道になる。それに加えて、ガスが立ち込めて露が笹からしたたり、歩いているうちに体がびしょびしょになる。


 三川台から1時間半ほどヤブ漕ぎをした地点で、昼飯のラーメンを作って食う。三川台付近で水を補充してよかった。このあたりにはまったく水場が無い。


 再び出発し、スマヌプリに登るとガスが晴れて、前方にオプタテシケの影が大きく見える。そこからハイ松とナナカマドの密生した中を漕いでいく。2時間ほどでコスマヌプリに着く。ここからやっと下りになり、オプタテシケの取り付きにあるテント場に着く。かなり疲れて、夕飯がまずかった。


8月8日

 オプタテシケに登る。長い登りとの前評判だったが、2時間足らずで切り立った山頂に立つ。最後までお守り代わりに背負ってきたメロンを食べる。ベベツ岳を越え、美瑛富士の手前から右に下り、白銀温泉へと向かう。